拍手が鳴り止まなかった素晴らしい対談!

昨日は、今展示中の動物画家、薮内正幸さんの息子さんで、薮内正幸美術館の館長である薮内竜太さんと、その薮内正幸さんの素晴らしい挿絵で飾られた、ガンバの冒険、「冒険者たち」の作者、斎藤惇夫さんの対談がありました。斎藤さんは福音館書店の編集者で、薮内正幸さんの同僚でもありました。斎藤さんが竜太さんに質問する、という形で対談は始まりました。
<動物と絵が大好きな少年だった>
「飛ぶ魚」の展示にも、薮内正幸さんが小学校五年生の時描いた素晴らしい動物の鉛筆画がありますが、とにかく小さい時から無類の動物好き、絵が好きな子どもだった。高学年の頃、山科鳥類研究所の高島先生に、鳥のこと、動物のことなどわからないことを手紙でお聞きしたら、丁寧な返事をいただき、それから文通が始まる。その後哺乳類についてから質問が多くなると、高島先生は上野科学博物館の今泉吉典先生をご紹介くださる。それからは今泉先生への質問からの文通が始まる。その頃福音館書店で、子どもたちには本物を!という松居直編集長のもと、世界一くわしい哺乳類図鑑の企画が始まり、図鑑の絵が描ける人をさがすことになる。そこで今泉先生が推薦したのが薮内正幸さん。松居直さんはすぐに大阪へ出かけ薮内さんの、上京を勧める。その後決心した19歳の薮内さんを松居直さんは自宅に受け入れ、薮内さんは19歳で福音館書店の社員になります。
<図鑑の絵を描くための訓練>
福音館書店でタイムカードを押してから、薮内さんは上野動物園に行き動物を見て描きその足で上野科学博物館へ行き、来る日も来る日も今泉先生の指導のもと、動物の骨を描くことを続けます。2年余の月日ののち、その図鑑の仕事が始まりまた出版に向けて山のような習作を繰り返すことになりますが、残念ながら、その膨大な企画は取りやめになります。福音館書店が、ぐりとぐら、いやいやえん、などが評判になり、月間絵本「こどものとも」も軌道に乗り児童書出版に全力を注ぐことになったからです。

<動物絵本の画家へ>
25歳で「くちばし」を描いたのち、「どうぶつのおやこ」「しっぽのはたらき」などの素晴らしい動物絵本を描きます。旭山動物園の小菅元園長が「毛並み、骨格、筋肉、どこを見てもその動物そのもの」と語り、畜産大学の方たちからも高く評価される動物絵本画家となる。26歳で憧れのアフリカのタンザニアとケニアに行き、動物の本物の姿を大自然の中で目と心に焼き付ける。27歳で福音館書店を退職して、画家として独立する。ちなみにご結婚のお相手は「いやいやえん」「ぐりとぐら」などの編集者、互井幸枝(戸田杏子)さん、薮内竜太さんのお母さまです。
<薮内竜太さんが薮内正幸美術館の館長になられたこと>
お父さまの正幸さんが60歳で亡くなられた後、美術館を作ったお母さまの幸枝さんも2年後にご逝去。一人っ子の竜太さんは、会社を辞め、博物館の勉強をし、美術館の館長を引き受けます。たくさんの不安を前に家族とともに東京から山梨県北杜市へ移住。1万点以上の薮内正幸さんの原画を管理、展示をする仕事全てを1人ですることになったそうです。みなさん、行ってくださいね。とてもいいところです。
<斎藤惇夫さんと薮内正幸さん>
同い年で福音館書店の同僚で、一緒にサッカーしたり、野球したり、家族旅行したり、楽しんだおふたり。「冒険者たち」を作家として描いている時、いろんな情景を目に浮かべている。そこで薮内さんの描いた絵を見ると初めは、自分のイメージとは違う、と思うが、後から薮内さんが描いてくれたのがまさにほんとの物語の絵たと思うようになった。薮内さんがいなくなったら動物の物語を書く気持ちがなくなった。サル学の大家で、動物文学の作者である河合雅雄さんも、薮内さんがいなくなってどうしようと言ってらした。(ちょうどこのお話をされている頃、河合雅雄さんがご逝去されたことを後で知りました。素敵なかたでした。ご冥福をお祈りいたします。)
北海道の帯広の広い平原に行った時、薮内さんが、棒きれを持って、ぐるっと走って戻ってきた。何をしてたかと聞くと、世界一大きなゾウを描いた、と言った。地上から見ることができたら、きっとナスカの地上絵のように見えて、ちゃんとゾウの形をしていたのではないかと思う。
薮内さんがとっておきのテープを聞かせてくれたことがあった。アラスカの地の静寂の中でオオカミの遠吠えが、一つ、そしてたくさんになる様子が録音されたテープだった。黙って聞かせてくれた後、薮内さんは言葉の代わりに、ウオーッと、上を向いて遠吠えをした、、、。薮内さんは動物を描くのが好きでたまらなかったその元には自分が動物になり切りたいほどに動物への畏敬の念がある、と思った。薮内さんの描く絵の、目の表現が素晴らしい。決して写真では表せない、動物への同じ生き物としての思いがが描かせたもの。最後に病床でお目にかかったとき、描きたいものは?と聞いたら、それぞれの顔を持ったライオン、と答えた。それからご自分もアフリカに行き、大平原の動物を見るたびに、薮内さんに思いを重ねている。


まだまだここに書けなかった竜太さんの面白い語り口、斎藤さんの愉快なツッコミなどありましたが、とにかく薮内正幸さんという稀有な画家の姿を私たちの前にくっきり描き出してくれた1時間半でした。
みなさまに聞いて欲しかった対談でしたが制限がありお断りしなければいけない方たちもおいででした。「飛ぶ魚」では対談の様子をビデオに撮ってありますので、ご希望の方はお見せできますのでお申し出ください。
薮内竜太さん、斎藤惇夫さん本当にありがとうございました😊。

ギャラリーカフェ飛ぶ魚

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