織茂恭子さんのトーク会おもしろかった!

1月20日(土曜日)の午後織茂恭子さんのトーク会がありました。いつも来て下さる方たちに加えて、織茂さんの桑沢デザイン時代のお友達、ロシア関連書籍のかつての出版社「ナウカ」時代の同僚の方たちも遠方からきてくださり、盛況でした。

 まず原画展の絵本『かわをむきかけたサトモちゃん』(アリス館)について、作者のえぐちよしこさん、編集の岩井真木さんと織茂恭子さんの三人のお話をうかがいました。えぐちさんと岩井さんは作家の小沢正さんの教室でごいっしょで、岩井さんはそこでのえぐちさんの作品に注目、えぐちさんは小沢さんが言われたひとことにヒントをえて、この絵本のお話を書かれたこと、そして岩井さんはこのお話を出版社にもちこみ、アリス館が出版することになり、えぐちさんも岩井さんも、小沢正さんの作品にたくさん絵をつけられていた織茂さんにぜひ絵を!とお願いしたいということで、岩井さんが依頼されたとのいきさつを話されました。織茂さんは小沢さんとのご縁だったこと、お話が小沢さんと重なるニュアンスがあって気に入ったこと、そしてご自分の畑でそだてている里芋が主人公なのでおもしろそう、ということで絵を引き受けられたそうです。

 それから、織茂さんの畑のお話になりました。織茂さんはだんなさまとふたりで、高崎にある畑に通って野菜を作られています。そこは300坪もある大きな畑ですが、初めは藪を開墾し、日照のため木を何本か切り、やっと畑にした土地。そこに通っていたある日、藪の向こうの真っ赤な夕焼けの空に飛ぶ者のシルエットをみる。それがキツネとの出会い。以来生き物を見たということで胸がたかなり、また畑へ行き藪の中にけものみちを見つけ、そこにキツネの気配を感じる。畑にいるとあちこちに生き物の気配を感じ向こうも人間の気配を感じていることがわかる。ほかにもトウモロコシをめぐる攻防戦に勝ったタヌキ、強いアナグマなども畑に来る。そのうち人になつく、おそらく捨てられた白いネコが来るようになり、織茂さんご夫婦はそのネコのことをつねに心にとめて暮らすことになる。藪の草をひっこぬくと、そこにはたくさんの虫がいるし、畑にくるチョウチョ、青虫、ミミズなどにも慣れ、愛情を感じるようになる。切った樹から水があふれだすのを見ると、樹の命を感じずにはいられない。でも樹を切らないと日照がたりず、作物がそだたない。そういう矛盾の中に身を置きながら、命がめぐっているということを実感する。最近虫やミツバチがすくなくなってきた。何かがかわってきている。畑で命のめぐり実感していると意識しないのに、自然にそれぞれが面白いもの、愛するものにかわっていく。命のめぐりがすくなくなったら、人間はどうすればいいのか。白いネコはだんだんおなかが大きくなって、かわいい子猫を二匹うみ、織茂さんたちは白いネコにつくった小屋をまた大きくしたそうです。(もちろん避妊手術も)

 ひとつひとつの出来事を細かく目に見えるように語られる、語りかける、織茂さんのお話は私たちもほんとに畑にいて織茂さんたちが見たものを見ているような気持ちにさせてくれました。

 『かわをむきかけたサトモちゃん』の絵がこんなに生き生きをしているのは、そういう畑の作物への愛情が自然と織茂さんの絵にもあらわれるからなのでしょう。

 参加くださった方へのおみやげ、湯河原作業所「たんぽぽ」特製クッキーを見て、みなさん感嘆の声をあげられ、また原画のほかに会場いっぱいにあるすばらしい立体作品、切り紙の作品などをごらんになり、サインをいただいて、コーヒーやお茶をのまれてトーク会は終わりました。

 夕刻からは織茂さん、えぐちさん、岩井さんのお三人を囲んで、夕食会。安江リエさんが東京から作って持ってきてくださったミカンスープ、やあれこれのお料理、ワインで絵本作りについてのお話にまた花が咲きました。

 日常からちょっと離れたこんな時間は心身を解き放って、自由な気持ちを運んでくれます。今週の金土も織茂恭子展をいたします。「飛ぶ魚」ですばらしい原画と作品にふれていただけたらうれしいです。