谷川俊太郎さん、「飛ぶ魚」へ!

 この16日の日曜日は、谷川俊太郎さんが「飛ぶ魚」に来てくださって、現在展示中のモダンアートの作家中辻悦子さんと、対談をしてくださいました。約50年前に、2011年に亡くなった元永定正さんと中辻悦子さんご夫妻、谷川俊太郎さんご夫妻それに、今回展示の絵本の作者、金関寿夫さんご夫妻でニューヨークで暮らされていた頃のことから懐かしそうに当時のことを話されました。

同じマンションの上下に暮らしていたので、谷川さんと元永さんはよく行き来をして、元永さんの絵にタイトルをつけたりしていた。それがきっかけで帰国後『もこ もこもこ』(文研出版)を出版。40年以上のロングセラーとなる。ここで、谷川さんがこの絵本をおもしろーく朗読、宇宙のはてに広がるような美しい絵とともにみんなで『もこ もこもこ』の世界を堪能しました。

 その後もうおひとりのニューヨーク時代のご友人であり、展示中の絵本『カニツンツン』(福音館書店)の作者でもある金関寿夫さんが、どんなに洗練された方でことばのセンスの光る方であったか、というお話に。お原稿をお書きになったあと、この絵本の完成を待たずに他界された金関さんですが、アメリカ文学者として、アメリカインディアンの詩を日本に紹介され、また同じくアメリカインディアンの詩の訳書『今日は死ぬのにもってこいの日』(めるくまーる社)はそのタイトルが一人歩きするほどのセンスを持ち、詩集もひとつ出されていたということでした。その金関さんが言葉を書かれた絵本『カニツンツン』いろんなレベルの言葉のコラージュで、彼の教養と遊び心がちりばめられている、と。谷川さんがまたまた『カニツンツン』のおもしろい朗読を聞かせてくださいました。谷川さんの声で絵本から出てきたことばが不思議なリズムを醸し出し、それに乗ってはじけとぶ絵が、私たちを自由な世界へ連れて行ってくれました。元永定正さんにとっては、ことばが先にできているものに絵をつけるというケースはまれ、と中辻さんはいわれていました。金関さんのお原稿をみごとに構成して最後にリフレインと余韻で終わる形にされたのは、絶妙なバランス感覚とすばらしいもの、おもしろいものへの感度抜群の中辻悦子さんでした。

 中辻さんは終始静かに、亡き夫モダンアートの世界の巨匠、元永定正さんがものを生み出すときに、いかに自分の中の無意識の中から立ち現れるものを絵にしていく方だったか、ほんとの知性をもった豊かな方だったかを語られました。谷川俊太郎さんも、ことばが出てくるのは、頭で考えるのとは違う、もっと下のほうの無意識の世界から、と語られ、このおふたり、そして同じ創造の源をもつ中辻悦子さんが生み出された、たくさんの絵本が、こんなにすっと子どもたちの中へ入ってゆけるわけがわかる気持ちがしました。

 そして中辻さんは会場の天井から下がっているポコピン人形にふれ、次のように語ってくれました。まだ二人とも若く、狭い家に夫の絵があふれ、子どもたちがいて、自分も何か作りたい、だけど、それを置く場所もない。その時、このポコピン人形をつくり、天井からつるしたら、その下で寝ている子どもたちも喜んでくれた。私の場所はこの空間ならある。それからこの人形をたくさん作り天井からつるしていた。そこへ夫の仕事を見にきたギャラリーの人がこれは面白いから個展をしようといってくれた。それが自分の作品を発表するはじまりだった。その個展のとき900体のポコピン人形を天井からつるした。

 それから展示中の絵本『これ め』を朗読されました。初朗読ということでしたが、明確なくっきりとしたユーモア漂うことばに、谷川さんはじめ会場の方たちから楽しい笑い声が聞かれました。中辻さんの中心のテーマはなぜ目なのかを、お聞きしたところ、ずうっと夫の仕事を黙って見ている年月が自然と目と一体になる自分をつくっていったのではないかと、このごろ思うようになったといわれていました。でもそういうことって、理屈じゃないんだよね、と谷川さんが言われていたのが心に残ります。人の深部にあるものがひょいと出てきて、その人にことばや絵や造形で表現を促す。そういう創作をする状態できをつけておられることは?とお聞きしたら中辻さんが「ふつうにしていることじゃないかしら」と言われ、谷川さんも「そうだね」と言われていました。この「ふつう」という言葉が私には深く残りました。このお二人のたたずまいの魅力もそこにあるように思えたのです。聞いてらした方もそれぞれこの「ふつう」について思われることがあったことでしょう。

 ほかにもたくさんの楽しいやりとりでみんなを魅了してくださったおふたりでした。ほんとにありがとうございました。テラスの向こうはたくさんのみかんでオレンジ色に輝き、空と海が青く光り、この日を喜んでくれているようでした。足をお運びくださったかたたち、狭い会場でしたので、ご不便をおかけして、申し訳ありませんでした。今回も『たんぽぽ作業所」の方たちが作ってくださった『これ め クッキー』をみなさんにめしあがっていただくことができてうれしく思いました。

 2Fの子ども部屋をみてくださったYさんはじめたくさんの方々が手伝ってくださいました。ありがとうございました。