片山さんのお話会

そして急にあたたくなった3月9日(土)午後2時からの「お話会」。まず片山令子さんが詩と手紙がご自分の中でどう『ながっているか、初めて寄稿した詩が特選になり、たくさんの手紙をもらったことや空からまかれるチラシがきらきら光ってたくさん落ちてきたイメージのこと、お絵かき教室で子どもたちに手紙を書いてもらったときに、それは楽しい手紙や、切手や封筒をつくったことなどのイメージが、のちにこの初めての絵本「もりのてがみ」のお話になったこと、そして絵本をつくるプロセスのことを話され、『もりのてがみ』を朗読されました。愛らしいことばの連なりや、かがやきに会場全体が絵本を耳で味わう喜びでいっぱいになり、大きな拍手が起こりました。ご自身の詩を朗読もありました。海と目の水分がつながっていることから着想された[海のレンズ」と題する詩のことばは、私たちの体の中に宇宙がある感覚を思い出させてくれました。

その後片山健さんが飾られている『もりのてがみ』の原画を一枚ずつ見ながら、丁寧にそこに描かれているものを説明してくださいました。とびらの家は当時、小さい団地住まいだったので小さいけれど、こんな感じのうちに住みたいなあ、という気持ちで描いたこと、主人公の「ひろこさん」が一生懸命手紙をかいている机は、子どもたちが遊ぶ部屋の中にあったご自分の小さな仕事机、その隣の人形の座っている赤い小さな椅子は、子どものバザーのときに作って上手にできた椅子、上にすわっている人形は友人の作品で、すばらしいといったらくださって、今はすっかり古くなったけど、ちゃんと家にあること、そして「ひろこさん」の書く手紙の字は、ご自分の子どもが誇らしげに書いた字で、その姿がよくて、とっておいといたものの写し、手紙の絵も同様にお子さんの絵のまねだったり、令子さんの絵のまねだったり。そんなお話のどれもが、小さな字ひとつ、置物ひとつ、どれもともに生きてきた人々の暮らしへの愛が宿っていることが伝わってきました。でも最後のシーン、ひろこさんが手紙をあてた友だちたちと会う幸せないシーンがどうしてもどうしてもうまく描けなくて、本になってからもそこだけは早くとじてしまっていた。今はすばらしい画家の井上洋介さんがきちんと「この絵はいい」といってから開いて見られるようになった。処女作の『ゆうちゃんのみきさーしゃ』もずっと見られなかったが、あるときから自分から離れて見られるようになった。このようにどの絵本も絵も完全な達成感をえられたことがなく、どこかに満たされないものが残ってしまう。こんどはいい絵をかきたい、こんどこそいい絵をかきたい、と思いながら今に至っていると話してくださいました。

片山さんの、奢ることの対極にいる自分自身でありつづけ、小さなことへの想いが宇宙の感覚につながることを信じ、絵を描き続ける姿があることで、私たちはその表現である、あのすばらしい絵を見て幸せになることができるのですね。

 ふたりでお話されることはなさらなかったお二人が「飛ぶ魚」のために、そろって来てくださり、こんなすばらしい時間をわたしたちにくださったこと、そして遠くからお近くからたくさんの方々が聞きにきてくださったことに、言い尽くせない感謝の想いでいっぱいです。かつて編集で担当した絵本がこんな形でみなさまの前にお目見えしたことも感無量です。そして一番うれしかったのは、「こどものとも」で『もりのてがみ』が出版されたときこの絵本が大好きだった12歳のももちゃんが最前列で聞いていてくれたことでした。子どものころ出会って大すきになった絵本はいくつになってもその人の心の宇宙の中で生きつづけているのでしょう。

 お二人にサインをしていただいた絵本を大事に持ち帰られたみなさんの笑顔がうれしかったです。

絵本たくさん用意したつもりだったのですが売り切れたものが多くてごめんなさい。次のオープンの15日までには用意しておきます。片山健さんのお話にあった『ゆうちゃんのみきさーしゃ』もいれておきます。